artbluebird

約5年の沈黙を破って、、、

「話し上手は聞き上手」

 

 

 

「お前は“おじいちゃんは社長だから自由に好きなことが出来るんよねー”とかのんきに言うけど、社長っつーのは孤独なモンなんよ。自由に出来るのは責任を果たしてるから。会社潰れたらおじいちゃんもお前も自由にも出来んけのー。」

 

 

行きつけの時計屋さんから帽子屋さんに移動する最中にふと、おじいちゃんが言った。

 

 

 

身体を壊して寝たきりになるまでの話だけど、

おじいちゃんが社長から会長になっても変わらず足しげく通う

行きつけの店があった。

すべて地元の商店街のお店。

大手のデパートには入っていない、完全個人経営かつ職人しかいないようなお店。

時計屋

帽子屋

カメラ屋

そして、スーツの仕立てを頼むテイラーさんのお店。

これらのお店にはおじいちゃんと親しい職人さんが必ずいて、

おじいちゃんがとっても嬉しそうに話していたのをよく覚えている。

また、幼い頃よくこの4つのお店に連れて行かれわけもわからず愛想笑いを振りまいたことを覚えている。

 

 

このおじいちゃんは最近亡くなったおじいちゃんの方ではない。

ずっと傍で生活していたほうの、私に帝王学を叩き込んだおじいちゃんのこと。

私がまだ幼稚園の頃から会社の仕組みや株式の仕組み(うちは株式会社でしたので)、うちの会社がどうなっているのかの内部的なこと、ひいては将来上に立つ者の心構えを

なんか知らんけどことあるごとに私に言ってきた、おじいちゃん。

帝王学の一環か?幼いころから私だけは何故かあちこち連れて行かれ、その度私は愛想を振りまくことを半ば強制的に覚えたわけなのですが、

このおじいちゃんは生涯孤独な人だった。

生まれてから会社設立・経営するまでの過程が、あまりにも酷で

日常生活ではどこにも心の拠り所がなかったんじゃないのか

そう思わざるを得ないような環境で、多分普通の人間ならとっくに自殺している。

でもおじいちゃんはもう酷な環境すぎたのか、元々そうだったのか、

なんだか憎めない人というか性格的に天然なところがあって、

「本人は威厳を振りまきたいけど天然だから面白い。なんか知らんけど周りが笑ってくれるからワシも生きていける。」

っていう感じの人であり会長だった。

純粋な楽観主義ではなく、もうそうでも思ってないとやってられない、っていう感じの天然さもあった。

「おじいちゃんそれわざと言いよるやろー。」

みたいな発言が多数あるけど、本人はいたって真面目な顔で

「そんなわけないやろ。」

とか言うし。

あの思考回路はいまだにわからないけど・・ある意味天才でした。

ちょこっと話が反れましたがだからこそ、おじいちゃんがこの行きつけにしていた店でのはしゃぎっぷりとか無邪気っぷりというか

純粋に「一人の人間としての楽しみ」を垣間見れて私はひそかに嬉しかった。

し、おじいちゃんが行くと職人さんもちょっと半笑いしてるんですよね。

普通職人さんって口数少なくて表情も表に出さない人多いんですけど、おじいちゃん登場の瞬間からすでに笑ってるんですよ。

普通はお得意様ですから半笑いするとかそんなことないんですけど、

なんかおじいちゃんは笑ってもいいような感じはあるんです、確かに、職人さんの気持ちわかります。

なんで職人さんが半笑いでもおじいちゃんを迎えるのか?

それは「しつこいぐらい色々聞きまくる、でも一向にうだつのあがらないお得意様だから。」

うちのおじいちゃんが帽子とスーツにこだわったのは、「自分にファッションセンスがないと自覚しているから。だからセンスのある人間にみてもらいたいと思ったから。」

カメラと時計が好きだった理由は「自分にその技術がないから、あんなすごいものを作れる人間と話がしたいと思ったから。」

職人気質な人間というのは、自分からアピールってしないんです。

でも、自分の腕を信頼してくれてそのうえで聞いてくる人間についてはものすごく寛容に教えようとするところがありまして、

おじいちゃんはきっと生涯自分の力だけじゃ無理って思ったからこのお店に通ったんだろうな、職人さんもおじいちゃんのことを理解してくださってああいう寛容な笑いで迎えてくださったんだろうな、とずっと見てきた私は没後もう数年たちますが改めて思うことです。

しかしうちのおじいちゃんは、とにかく自分の専門外のことについては

まーしつこいぐらいに聞きまくる人でして

赤ちゃん・子供や若者だろうと新入社員だろうと中堅だろうと大御所だろうとお構いなしですよ。

とにかく好奇心旺盛というか、自分が知らないことを人に何かを聞くことに全く抵抗がない人間でした。

しかも聞くときは自分のことは極力喋らない。

これはおじいちゃんから教わった教訓だと思っています。

人間、どうしても立場・ステータスで偉そうになりがちだけど

そうじゃないって。

この姿勢はおじいちゃんから学んだことです。

 

 

 

「話上手は聞き上手」という言葉があります。

これは一理あるなと。

すべてではありませんが、

※おじいちゃんは独特すぎてなに言ってるのかよくわからん時も多数ありましたが※

一般的なお話しで

そういう頭と心の柔軟性は、生涯保ちたいものであります。

 

 

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