artbluebird

約5年の沈黙を破って、、、

可愛くない女

 

 

 

ジェンティルドンナ

通称:貴婦人。

父はあの、ディープインパクト

GI勝利は7勝。(牝馬ではウォッカと同成績)

 

 

重馬場(雨で湿った馬場)が苦手だっていう唯一の欠点を除けば

まるで精密機械のような印象があるこの馬。

 

騎手が幾度となく入れ替わり

そのたびに違う要求をされる中

文句ひとつ言わずそれに素直に従う。

パドックでの荒々しさはどこへやら。

レース中は非常に冷静かつ的確。

最後のラストスパートを除いては。

 

 

また、東京だろうが京都だろうが

馬場特性がほとんどない。(ウォッカはその辺偏っていた)

 

 

さらに、先頭逃げ切りも、

大外からの捲りも、

通常牝馬は苦手とされる接近戦も

好位置からの抜け出しも

自由自在な戦法をとれるというのが

この馬の最大の魅力。

 

通常、牝馬は牡馬と馬体を合わせての勝負を避け

サイレンススズカのような完全に逃げ馬になるか、

ウォッカ、ブエナビスタがとった外から一気に捲る戦法にでるか、

大まかに二つに分かれるけれども、

この馬は全然違った。

私の好きなエアグルーヴは唯一接近戦でガチンコ勝負をしかけた牝馬だけど

やっぱりそれでも牡馬混じっての勝負は

勝ち越すのが難しかったよう。

時代的な牝馬への偏見やトレーニング方法もあったように思うけれど、

時代が進み、

こういう自由自在型の牝馬が現れたのだから

エアーグルーヴがあのときに(バブルガルフォローとガチンコで叩きあったジャパンカップ

身体を張って牝馬の可能性を証明したことは

実に意味があったようにも思う。

 

と、話が反れたので元に戻します。

 

 

そんな「非常に欠点の少ない牝馬」のジェンティルドンナ

この馬、

自由自在な戦法を取れるクレバーな馬なので、

やはり成績もそれなりのものを残すわけで。

GI7勝以外の戦歴も、

ほとんどが入賞しているのもまたすごい。

競馬ファン的にも馬券を流して買えば

うまく絡む馬でもあったわけですが、

 

この馬、不思議と実力と反して人気のない馬でもありました。

馬券的な人気ではなく、

所謂アイドル的な扱いを受けなかった牝馬であります。

 

 

理由はなんとなくわかります。

要するに、「可愛くない女」なのであります。

 

 

“もしもジェンティルドンナが社会人だったら”

という仮定で以下記します。

 

 

 

新入社員で一緒にOTJ研修を受けたヴィルシーナ

そのあと同じ部署で女だらけの部署に配属されたジェンティルとヴィルシーナ

研修時から成績優秀だったジェンティルは営業1課。ヴィルシーナは2課。

ジェンティルは美人で成績優秀だけど、いかんせん社内では愛想がない。

社内の先輩おばさんは「あの子可愛くないのよねー。礼儀正しいし、トラブル起こすわけでもないんだけど、如何せん仕事しかしないんだもん。ちょっとは私たちの愚痴にも付き合ってほしいんだわー。でも営業成績全国トップだからむかつくのよねー。成績いいから文句言えないんだもん。」と陰口を叩く。

もちろん男性上司に媚びを売ることもない。

一方ヴィルシーナは美人ではなく成績はそこそこイマイチだけど妹キャラで社内での評判はいい。

「せんぱーい。今日飲みに行くんですよねー。私も一緒に行ってもいいですかー?」

とか甘い声を出しておばさん方を取り込むのが実にうまい。

そんな二人は親友であり、ライバル。

※多分似た者同士じゃないからうまくいくんだと思います。人間も同じです、このへんは※

 

入社2年目。

彼女らの部署に超モデル系美女のジョワドヴィーグルが入社。

「本日付で〇○に配属されたジョワドヴィーグルです。宜しくお願いします(ペコリ)」

ジャンティル「ふーん、美人じゃん。売れそうねあの子。いいねいいね。あ、ってか今日のアポ何時だったっけ?(手帳で確認する)」

ヴィルシーナ「うわー超美人だしー。ヤバイやばい。」

二人の反応は対照的。

 

そのジョワドヴィーグルは超モデル系美女なのに意外と体育会系で

そこそこの成績を残す。

が、仕事人間のジェンティルドンナは一向に返さず。

一方ヴィルシーナも「これはヤバイ」と

おばさん方を取り込むよりも自分の成績に危機感を覚える。

 

 

入社5年目。

ついにジェンティルドンナが上司に直談判。

「もっとフェアに勝負したい。」

入社から5年。

入社以来上司が幾度となく変わるも

営業成績は落ちず、黙って従ってきたジェンティルが

ついに本性を現した。

「女だけの中で勝負したって面白くねーんだよ。」

とでも言っているかのように。

当然、それなりの成績を残していたジェンティルに新任の上司に引き留める術はない。

上司「牡馬と対等に戦うのは今までとわけが違うよ?」

ジェンティル「そんなのわかってますよ。でも私の主戦場は女だけのぬるい場所ではありませんから。」

 

入社から5年目の秋。

ジェンティルは本望であった「フェアな戦い」ができる舞台に異動が決まる。

その初戦。

諸々のコネで同じ会社に入社したオルフェーヴル

異動早々にガチンコ勝負をしかけ、勝利。

ジャパンカップ

「なめんなよ、ひよっこが」

そうやって美人なのに性格は男前、通常は頭脳明晰でスマートな戦いをするジェンティルが

珍しく本性むきだしで牡馬にタックルかましてでも叩きあいで勝った。

 

 

入社6年目。

そのJCでの勝利が全国に知れ渡り、

そこから主戦場を牝馬限定から牡馬混じるガチンコ勝負に切り替えたジェンティルを

マークする牡馬がかなりいた。

私が好きなゴルシ(ゴールドシップ)は間違いなくその一人。

ゴルシ「あのアマ、調子乗ってやがる。いけすかん奴や。」

ジェスタウェイ「ゴルシー。そんなムキにならなくてもいいじゃーん。明日も調教あるし寝ようよー。」

※ゴルシとジャスタは同じ厩舎で非常に仲が良かった。親友ですこの2馬。※

トーセンジョーダン「アイツやばいわ。ちょっと本気出さな勝てそうにない。」

ウィンバリアシオン「はっはっは。牝馬?まぐれでしょそれ。気にすることないね。」

フェノーメノ「うわー、すごい女きたわ。でもあのコース取りセンスあるんだよなー。ちょっと観察しますか。」

と牡馬の反応はそれぞれだけど、要チェックされたのは間違いない。

 

 

こうしてジェンティルの噂が全国に知れ渡る。

 

 

入社7年目。

ついに、宿敵でありわかり手同志が

同じ戦場で戦うことになる。

宝塚記念

ゴルシとジェンティルが初顔合わせになったのである。

昭和のヤクザの残党みたいなノリのゴールドシップはもちろんジェンティルを威嚇。

といっても、喧嘩売るというよりは

遠目に噂の最強牝馬の実力を確かめるような感じ。

一方ジェンティルも同期のゴルシの噂は入社以来耳にしており

いつも全国トップ10にいる、月末に猛烈な捲りをかます要警戒人物として(ビジネス的に)

チェック済みであった。

 

いざレースになると

ここはやはりステイヤーの意地。

ゴルシの圧勝であった。

「お前の度胸は認めるが、長距離は俺の主戦場だぜ?なめてんのか?」

ゴルシはそう言っているかのようでもあった。

一方ジェンティルも、ゴルシに一目置くようになった。

「あのクソ男、なかなかやるじゃん。」

 

 

この二人。

同じ学校だったら、多分こんな感じです。

ジェンティルが表向き品行方正な常に学年トップの成績優秀女子ならば

ゴルシは教室の一番後ろの席で爆睡せずも授業中に普通に

「あ、トイレ行くわ」とか言ってさぼってトイレ行ってその足で保健室に行くような不良学生です。

でも、ゴルシはさぼるけど授業に出てるときはちゃんと聞いてて

ノートなんか取らずとも実はIQ高いからしっかり内容覚えてる、みたいなタイプなんですよね、これが。

 

 

そんな相反する性質の二人がなぜ意気投合したか。

答えは、「二人とも実に頭がよかった」から。

 

 

優等生女子だからこそ、ゴルシの頭の良さに気が付き

ゴルシのバックにはきっとヤバイ奴がいるっていうのも勘づいたのでしょう。

※不良学生を後ろで操っている人間がいることに気が付いたのでしょう※

「あー、これは喧嘩売られても買わないのが鉄則。」

不思議とゴルシと同じレースでの成績が悪い。

これは実力だけではないように思ってしまいます、人間的な目線で。

一方のゴルシもジェンティルが汚い手を使うわけでもなく

淡々と牡馬混じるレースに出走してきたことに一目置いていて

「あのアマ、なかなか根性据わっとるやないか。しかもアイツ賢いし。よくわかっておる。」

と気にかけていた様子。

※ただこの2馬。ゴルシが年上っぽいけど実は同期です。びっくりしちゃいますけど※

 

 

そんなこんなで寿退職が決まった入社10年目。

引退レースになった有馬記念

有終の美で1着を飾るジェンティルドンナなわけですが、

このレースに関しては

人間にはわからないけど

なんだかゴルシとジェンティルの間で

口裏合わせがあったようにも見えてならないのです。

なぜならば、本来ならば差し切れるはずのゴルシが

どーも手抜きをしたようにしか見えないからです。

 

 

ゴルシ「ジェンティル。お前今日最後のレースらしいな?」

ジェン「あー、そうよ。仕方ないでしょ。なんか文句ある?」

ゴルシ「いやー、そりゃー文句ねーわ。現役だけがお前の人生じゃねーもんなー。」

ジェン「で、アンタ何が言いたいわけ?」

ゴルシ「オメー最後なんだろ?」

ジェン「うん、そうよ。だから何よ?」

ゴルシ「まー、そう喧嘩売るなよ。俺にも考えあるからよー。」

ジェン「落馬しかけるとかやめてよ?!」

ゴルシ「はっ?!ふざけんなっ!俺はそういう意地汚ねー勝負は嫌いなのお前よく知ってるだろうがっ!」

ジェン「あっ、ごめん。」

ゴルシ「心配すんなって。俺はアンフェアな勝負しねーから。でも、お前の最後はちゃんと飾らないとな!」

ジェン「それどういう意味よ?!」

ゴルシ「まー。あと1時間後にはわかるさ。」

 

 

パドックからレース間の1時間の間に

ゴルシはきっと各方面に“圧力”をかけたに違いない。

 

 

先輩のウィンバリアシオンパイセンに頭を下げ、

「ウィンさんが勝ちたがってるのは俺だって知ってますけど、今日はアイツの晴れ舞台なんですよー。先輩ならこの意味わかりますよね?」

いつもトレーニングで会い、そのたびに蹴りをかましていたトーセンジョーダンに対しては、

いつもどおり蹴りをかましたうえで、

「オイ、今日はちょっと頼みがあるんだわ。アイツ今日引退ってお前知ってるだろ?俺の言いたいことわかるよな?今日だけは協力してくんねーかな?」

当時人気実力ともにあがっていたフェノーメノに対しては

「オイ、オメー今日のレース、誰が主役かわかってんだろーな?!下手なことするとぶっ殺すからな。」

 

とか、きっとあの日ゴルシは相当圧力をかけたに違いない。

 

当のゴルシも本来ならばあの100mで差し切れるはずだったのに

明らかに手を抜いた。

でも、わざと負けたように見せないため

200メートルまでは競り合うように“わざと見せた”ようにしか

私には見えない。

 

 

そうやってゴルシなりのジェンティルへの“気遣い”がこの時ハッキリ見えた。

 

 

昭和のヤクザ感がする生粋の不器用ステイヤーなりの

好敵手に対する最大の賛辞だったのかも、しれない。

 

顔はアイドルみたいな顔している昭和のヤクザなのに、

なかなか粋な計らいをしおる。

 

 

そして、宣言通りに寿退社。

今は後続(子供)の育成に精を出しているジェンティルドンナ

 

 

きっと好敵手であり、全然似てもにつかなかったゴルシとの間には

おそらく子供はできないと思う。

 

性格的に「同志」って感じだもん、この2馬。

 

 

 

長くなりましたが、

ジェンティルドンナが人気なかった理由は、

やっぱり可愛くないからだと思います。

 

 

でも、私はジェンティルドンナ好きなんですよ。

 

 

ちょっと気持ちが分かるから。

 

 

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